「何人だね、この夜更けにやってきたのは」
と言うと、外から女の声で、
「私は秀才の琴を聞きにあがったのですよ」
と言った。李汾は不審に思って戸を開けてみると、若い女が来て立っていた。李汾が、
「あなたはどうした方です」
と聞くと、女は、
「私は張の家の者でございますが、今晩はお父さんもお母さんも留守でございますから、そっとお目にかかりにまいりました」
と言った。李汾が喜んで、
「
女があがってくると、李汾は茶を出して冗談話をはじめたが、女の口が旨くてかなわなかった。その後で、
が啼いて夜明けを知らせた。女は起きて帰ろうとしたが、李汾は女を帰すのが厭であるから、女の履いていた青い靴を一つ隠して籠の中へ入れた。そのうちに李汾はとろとろと眠りかけた。その李汾の体を女は揺って、「どうか靴を返してください、今晩きっとまいります、その靴がないと、私は死ななくてはなりません」
と言って泣いたが、李汾はとうとう返さずに眠ってしまった。女は暫く悲しそうに泣いていたが、李汾が眼を覚ました時には、女はいずに床の前に流れている鮮血が眼に